大学病院で6年、インプラント専門クリニックで4年、歯周病専門クリニックで2年半ほど勤務してきました。
そのような環境の中で、歯周病に罹患されている方を数多く診てきましたが、歯周病は歯の土台となる歯槽骨から失っていく病気ですので、治療には根気がいります。
中には、すべての歯を抜歯しなければいけない重度歯周病の方もいらっしゃいましたし、
30代前半で重度の歯周病になってしまった方もいらっしゃいました。
歯周病で歯を失ったとき
歯周病は、歯周病菌の感染と、それに対する身体の免疫反応で成り立つ疾患です。
基本的には、歯周病菌のコントロールを第一目標に、日々ブラッシング習慣の改善や、専門的クリーニングなどが必要になります。第二目標として、失われた骨や歯を再建する治療が待っています。
歯周病菌のコントロールができないくらいに、歯周病が進行している場合には、歯を抜かないといけなくなります。
歯周病菌の感染拡大とそれによる周囲組織への炎症で顎の骨が大幅に吸収してしまうことがあります。
歯を失う原因は、う蝕(むし歯)、歯周病、破折(歯が折れること)が3大原因ですが、その中でも歯周病により歯を喪失する場合は、まわりの骨の量が足りずに、インプラントを埋入しようにも、埋入ができない状況が多くあります。
また、歯根破折を長期間放置した場合も、亀裂から歯周病菌が骨の中まで広がり、同様の結果になることがあります。
インプラントの周りには骨がしっかりと存在していることが必須です。
もしインプラント周りがしっかり骨が維持されていないと、インプラント表面に歯周病菌が蓄積して、インプラント周囲炎(インプラントの歯周病)になってしまうことがあります。インプラントと骨は切っても切れない関係にあります。
どのように骨を再生・再建するか
このCT写真は、歯周病と歯根破折を長期間放置したことにより、顎骨が大幅に無くなってしまった症例です。
患者さんはインプラントの埋入を希望されていましたが、このままですと埋入するための周りの骨がほとんどない状態です。
このような症例に対しては、インプラントを埋入する前に骨を再生・再建させる必要があります。
骨がうまく再生するためには、細胞(血流)と足場(空間スペース)が必要となります。
この症例では、
①骨をきれいな状態にし
②骨からの血流を促し
③人工の骨と患者さんの骨を移植し
④スペースを維持するために、生体膜を使用しました。
GBR(骨造成)という術式です。
これは術後6か月のCT写真ですが、しっかりと骨の再生が確認されます。
インプラントを埋入するために十分な骨の幅を確認することができます。
歯周病により顎骨が大幅に無くなってしまうことはよくあります。
そのような場合でも、骨再建の術式を使えば、骨を回復させることができます。
しかし、やはり手術をすることになりますし、場合によっては自分の骨を削って採取し移植することも必要となりますので、快適な治療ではありません。
なによりも大切なのは予防であり、歯周病にならないように日々口腔ケアを怠らないことが大切ですね。
LOTUS 矢野