知人の紹介で東工大で講演することになった。
東京医科歯科大学ではたまにセミナーのお手伝いをしたり講演をしたりすることはあるが、他大学での講演はなかなかない。
ToTAL (Tokyo Tech Academy for Leadership)というプログラムで、他分野の専門家やプロフェッショナルを講師として招聘し、学生に向けて知見を広げる講演をするというプログラムだそうだ。
歯科医師としてどんな話ができるだろうかと苦慮しつつ、一般的な口腔の機能や解剖に関する総論、歯周病が全身疾患に及ぼす影響、近年注目されているオーラルフレイルに関してをテーマとした。
聴講した学生は歯科専門ではなないが、東工大修士-博士過程の学生ということで、みなサイエンスのバックボーンがあり、とても理解が早く共感を得やすかったのではないかと思う。
とても意欲的で理知的で素晴らしい学生の方々でした。
他分野の専門知識に耳を傾けるということは、
スポンジのような頭に、異種の専門分野の知見が染み込んでいく。新しい知見が材料になり脳内で時間をかけて熟成される。
世界を見る目が少しだけ改変される。学生を終えれば、身の回りのすべてはリアルなものになっていく。コンセプチュアルな思考が薄まり、生きる上で必要なリアルな情報群に置換されていく。
だからこそマテリアルは学生時代に吸収したほうがいい。コンセプチュアルな思考のネットワークを可能な限り広げるべきだ。
モラトリアムの期間は長すぎても長過ぎることはない。僕もずいぶん学生期間が長かった。学部生で6年、1年休学、1年研修医、5年大学院の合計13年間学生をしていたことになる。その
期間が無駄だとは全く思わない。博士課程で基礎研究をしていたときに主任から言われた言葉で印象に残っている言葉ある。
PhDはなんの略が知っているか?Doctor of Philosophyだ。だから博士課程は哲学を固めるためにあるんだ。
目の前の学問がなんのために存在していて、学術体系のどの位置にあり、実体経済にどの程度影響を与えているのかというマクロの視点もすべて得ることが、PhDというものなのだと認識した。
この日は歯科のトピックを中心に講義したが、付加的に医療とアートの関係性についてもお話させていただいた。
サイエンスとアートの理想的関係性について研究と臨床の両側面から打ち込んできた背景を持って自身の考えを伝えた。
問題提起としてサイエンスとアートの関係性について述べたが、主任の山田教授からは共感をいただき、また、アートとサイエンスの交点でイノベーションが生まれるとのご意見をいただいた。
今後とも引き続き多くのプロフェッショナルを巻き込んで、次世代のリーダー達につなげていってほしいと思う。
LOTUS 矢野