重たい雨が続いております。傘をしていても濡れてしまいますね。
今日は父の治療をしました。
歯周病の治療です。
父は10年ほど前に大阪で歯周病の専門治療を受けたそうです。
しばらくは安定した状態が続いていたそうですが、
今回歯ぐきから血がでる、歯が動いてきたという主訴をもとに当院で治療を受けることになりました。
レントゲン写真をとり、CT撮影を行い、歯周組織精密検査を行ったところ、
全体的に歯周病の進行が確認されました。
骨が溶けている部位が確認され、病的に歯も移動を始めていました。
神戸からの通院となるため、時間の短縮と治療効果を期待し、フルマウスディスインフェクション(FMD)を行いました。
静脈内鎮静法を併用した、全顎的除菌治療です。
全顎的というとすべての歯ですので、28本あります。
鎮静剤でリラックスしている状態で、伝達麻酔、浸潤麻酔をしっかり行い、痛みのコントロールを行います。
麻酔で痛みをコントロールした後は、高出力の超音波スケーラーで、歯根面に付着した大部分の歯石を除去します。
その後に深い歯周ポケット部の歯根面を手用の器具を用いて徹底的にクリーニングします。
深いポケットの部位や、奥歯で歯根の形態が複雑な部位は、器具を適切に届かせることが難しくなります。
28本のディープクリーニングは骨の折れる作業です。
保険内の診療ですと、一日最大7本から8本くらいを一時間くらいかけて治療することが多い。
すべての歯を一日で行うことは、患者さんにとっても負担が大きく、長時間の作業のため術者も体力と集中力がいります。
鎮静法を併用したり、専用の機械や器具を使用することで、心身の負担を軽減することができます。
一本一本歯を徹底的に除菌していくと、歯を一本ずつじっくり観察することになります。
この歯は神経がないんだなぁとか、
この歯は半分くらいすり減っているなぁとか、
歯茎がやせてさらにものが詰まりやすくなっているなぁなどと、いろんなことに気づきます。
骨の厚みやかみ合わせ、歯並び、いままでの治療歴や治療方法など、
本当に多くの情報が詰まっています。
情報の宝庫ですね。
生体モニターで心拍数や、酸素飽和度、血圧をモニターしながら治療を進めますが、
末梢酸素濃度が少し低く、いびきのかきかたも特徴的で、睡眠時の無呼吸も疑われました。
60余年の人生の積み重ねを観察しながら、少し感慨深くなりました。
歯科医師になって10年ほど経ちましたが、ようやく両親の歯科治療ができました。
わざわざ東京まで来てくれてありがたい限りです。
ささやかな親孝行になったのではないかと思います。
LOTUS 矢野