精密な診断にCTは欠かせない
CT像があるのとないのとでは、診断と治療の精度が格段に変わってきます。二次元的なレントゲン画像では描出できない三次元的な組織イメージが立体的にわかります。
歯科治療を行うにあたって、歯科用CTは不可欠なものとなりました。
撮影範囲(FOV)の設定によって撮れる組織が変わってきます。
親知らずの抜歯や、インプラント手術を行う場合は、14~16cmのFOVがあると無理なく診断ができます。最近では、頭蓋骨の上方まで撮影できる機種も出てきました。
CT機器は年々開発が進み、撮影範囲が広くなってきています。
また、撮影の画素を表すVoxelの単位も細かくなってきており、描出精度が上がってきています。最近では、歯の周りの薄い膜である歯根膜のスペースまでもはっきりと診断できるようになってきました。
どのCTを買えばいいのか
CTの有用性は多岐にわたり、重要性は言うまでもありませんが、いざ購入するとなるととても悩みます。非常に高額だからです。気に入らないからと言って、簡単に買い替えることができません。それに加え、CTに関するセミナーはメーカー主導のものが多く、客観的に機能を比較するのが難しい。
一般的には開業するまでに使用したことのある使い慣れたCTを選ぶか、歯科用ユニット(治療椅子)と同じメーカーのものにして管理をシンプルにするかが多いと思います。
学生の頃の歯科放射線学では、各メーカーの特徴など教えてくれません。
知人の紹介や、デンタルショーに足を運んだりして悩み悩みながらCTを選びます。
私は個人的に、国内、国外で広く使わているほぼすべての機種を使用したことがあります。
国産のメーカーの良さや特徴、海外のメーカーの良さや特徴、それぞれ異なります。あるメーカーのものは非常に高い精度で撮影できるが、インプラントシミュレーションが全くできない。あるメーカーは、精度が高いが撮影時間がとても長い。などなど。
その中で、CTを選ぶ際に検討する重要項目をまとめてみますと、
①FOVの設定の自由度
②高い解像力
③短い撮影時間
④直感的な画像ソフト
⑤値段
などが重要項目となります。
当院が選んだCT
当院では、北米で最も売れているCT、Vatech社のGreenX(最新Ver)を導入しました。
インプラント専門クリニックで院長をしているころに、Vatech社のものを導入して4年ほど使用しました。撮影範囲や精度に申し分なく、コスパも良い。インプラント埋入シミュレーションもできる。3Dデータもスムーズに書き出せる。撮影時間も短い。
1歯単位の根管治療から、上顎洞にかかる骨移植術、全顎的インプラント治療、親知らずの抜歯にいたるまで、ほぼすべての症例で無理なく使用できていました。
強いて言うならば、撮影範囲がもう少し広ければよいなということは感じていました。
今回導入したVatech社のGreenXの撮影範囲はシングルスキャン(一周撮影)で眼窩上縁まで撮影でき、ダブルスキャン(二周撮影&自動合成)で頭蓋骨上縁まで撮影できます。
日常臨床であれば、シングルスキャンで問題ありません。
顎関節の診断に役立てたり、上顎洞上方の診断、眼窩下縁と外耳孔まで撮影範囲に入っているため、咬合平面のずれ(かみ合わせのずれ)まで診断することができます。
撮影時間も10秒かからないため驚くべき進化です。
さらには小範囲撮影(5cm×5cm)の撮影のvoxelは50μmであり、現存する歯科用CTの中で最小値となっています。これにより、骨欠損形態や、根管治療の際の根管形態のより精密な診断につながります。
フォルムもシンプルでクリーンで気に入っています。
デジタル歯科治療もどんどん開拓されていっていますし、我々もこの高機能を活かせるように臨床に努めます。
LOTUS 矢野