知り合いのご紹介で、シアトルからDr.LeeがLOTUS DENTAL CLINICへお越しになりました。
LOTUSでのインプラント手術の見学をされた後に一緒に食事をしました。
Dr.Leeはアメリカのシアトルでインプラントセンター、一般歯科を開業してらっしゃいます。
駐車場付きの巨大なデンタルセンター。
スタッフは総勢50名の巨大歯科クリニック。
歯科医師になって10年ほどでここまで規模のクリニックを運営されています。
ドクターは各分野の専門ドクターが常勤で4−5名います。
年齢は私よりも年上ですが、歯科医師歴10年と言えば私と同期にあたります。
圧倒的です。売り上げ規模も日本で聞いたことがないレベルでした。
臨床も相当なレベルでされていて、まさに歯科医としての成功者です。
アメリカと日本の歯科事情が文化的にも法的にも医学的にも異なることから、一概に比較をすることは難しいですが、
それでも学ぶことがたくさんありました。
歯科医としての成功者という表現を使いましたが、
成功のカタチはいろいろあると思っています。
・研究をとおして歯科医学の発展に貢献する
・規模を拡大し、ビジネス的な成功をおさめる
・臨床家として高いレベルの臨床症例を重ね、書籍や学会などで発信する
・地域に広く歯科医療を提供し、歯とお口の健康に貢献する
どれも素敵な方向性です。そして達成することが難しい。
時間は有限であり、脳の容量、心と肉体のキャパシティが有限であること。
そしてこれらの方向性がまったく異なる方向を向いているため、1つのみならず、2つ3つ達成していくということは至難の業であると身に沁みて感じています。
大リーグでご活躍されている大谷翔平選手が二刀流で大成功をおさめていますが、とにかく二刀流は難しいのです。
体もマインドも相当な練度を持って整えて切り替えていかなければいけない。
Dr.Leeが素晴らしいところは、臨床家として高いレベルのインプラント外科処置を毎日のようにされながら、非常に大きな規模でクリニックを経営されているという点でした。
臨床の知識と経験を最大化するために、マーケティングの勉強もしっかりされて、多くのスタッフを雇って経営もしっかりされている。
今回非常に面白かったのは、Dr.Leeが提唱する新しいクリニック運営のカタチです。
フランチャイズスタイルでもなく、個人開業スタイルでもなく、複数人の専門ドクターが集まる「センター」というスタイルです。
規模も大きいため、患者に対するアプローチもしっかり行え、患者さんが医学的にも心理的にも大きなメリットを受けることができます。
インプラント治療も審美治療も義歯の治療も、メンテナンスも小児歯科も一つのクリニックで専門の先生に診てもらうことができます。
近年アメリカで増えてきているスタイルだそうです。
戦略や方向性を立てる強いリーダーシップが必要になりますが、Dr.Leeは見事に形にされているようでした。
彼はこのスタイルのことは「グループデンティストリー」と呼んでいました。
フランチャイズでもなく、個人開業でもない、一人の代表社長(リーダー)を中心に小さな大学病院みたいな大型のクリニックを運営するというスタイルです。
アメリカではパートナー開業というスタイルはありますが、
専門医が複数パートナー開業をするスタイルは、オーナーが複数人いるという形態になります。
オーナーが複数人いれば、利益は折半になり、各オーナーの懐は潤います。
しかし、大局観を持った戦略を立てるのが非常に難しいと言っていました。
ビジネス的に永続的に成長していくためには、
ある時は大規模なマーケティングを行い、ある時は拡大のための大規模改装を行い、ある時は土地や建物を購入するといった大きな決断を重ねていかなければならないからです。
その時に人もお金も多くのコストがかかります。その決断をするためにオーナーは一人であるべきだという考え方です。
この考え方には目から鱗でした。
歯科医師としてキャリアやビジネスの広がりを考えてみた時に、
近代歯科の咬合学の父であるL.D.Pankey(1906~1989)先生は
歯科医師はだいたい2方向に分かれるように進んでいくという表現をされました。
①ビジネスマンになるか
②臨床家になるか
この二つは両立が難しいと聞きます。可能であるが難しい。
どちらかに軸足を置きながら拡大成長していくそうです。
完全なる両立(二刀流)がいかにむずかしいか。
その難しさを背景にして、日本ですと、
フランチャイズ的に広げる(ビジネス)か、臨床を狭く深く極めていくかに分かれていきがちではないかなと思います。
あるいは私のような小さなクリニックを運営していても、スタッフも集患も力がついてきたタイミングで2件目3件目と考えられる先生は少なくないと思います。5−10医院は全く別次元になると言います。ビジネスマインドを中心に考えないと成功しない規模感になります。
そして、私どものようなとても小さなクリニックが仮に軌道に乗ったとして、もう一医院作りたいなと考えた時に、同じような規模感のクリニックを同じような戦略で開業するか、事業継承や売却も視野に入れながらもう少し小規模で開業するか、あるいは銀座や表参道のような一等地で自費専門クリニックを開業するかという風に発想は分かれていきます。
Dr.Leeはその発想の枠組みを広げてくださいました。
真の両立(二刀流)を感じました。
真の二刀流を体現している方に出会ったのは歯科医師人生で初めてかもしれません。
私ももう少し成長をしていつかシアトルまでクリニック訪問をさせていただければと思っています。
LOTUS 矢野