院長の矢野です。
今日は内装に関して書きたいと思います。
当院の内装に関する総括(まとめ)的な内容です。
卒後、非常勤(バイト)も含めると5-6医院で働いてきました。
診療スタイルや先生の考え方はそれぞれ異なります。
また、クリニックの内装もいろんな種類のものがありました。
自宅兼診療所もあれば、駐車スペースと診療ユニットが10台以上ある地方の大型のクリニックもありました。
都心の駅近ビルテナントでも働きました。
それぞれに良さと特徴があって、大変勉強になりました。
クリニック内装に関しては、個人的に大きな関心を寄せてきました。
内装デザインを考えるようになったきっかけ
内装デザインで群を抜いてイノベーティブだったのは、渋谷宮益坂上にある青山クオーツデンタルクリニックです。
研修医のころに徳真会グループの立川診療所で勤務して以降、徳真会には6年ほど非常勤としてお世話になりました。
徳真会は全国に数十医院ある日本最大規模の歯科医療グループなのですが、超都心に都会型のフラッグシップモデルを建てるということで、力の入ったプロジェクトでした。
縁あって立ち上げメンバーとしてプロジェクトに参加しました。
渋谷宮益坂上という超優良立地に、ガラス張り10階建てのビル。
そのうち、4フロアが歯科というなんともスケールの大きなプロジェクトでした。
日本トップレベルのデザイナーが手掛けたということで、非常に斬新な内装デザインでした。
大理石でできたオブジェや、特注のラウンドソファ、5mほどの天井高さ、ガラス張りの壁面、レーザーカットしたパーテーションなどなど。
同グループの方針として医療とホテルのようなサービスの融合を目指し、空間デザインを含めたホスピタリティに注力してきた経緯があります。
医療とサービスを融合させようという姿勢にはものすごく学ばされました。
最小限の条件で最大限にデザインを
しかしながら、我々は個人規模の開業です。
大型医療法人の資金や人材規模とは比べ物にならないくらい小さい。
都内でクリニックをオープンするということは、処々の条件が限りなく限られています。
優良物件を見つけるのは難しい。
都内のテナントは狭く、家賃が高い。
一階の路面物件は高い。
駅近は高い。
新築は高い。
家賃と物件条件を天秤にかけないといけません。
限られた条件の中で、多くの先生が開業されているわけです。
限られたスペースに先生ごとのこだわりをできるだけ詰めこみます。
LOTUSの物件
そんな中、縁あって契約させていただいた本物件は、私にとっては最良の物件でした。
一階路面のコンビニの跡地です。
駅からも近く、目の前が幹線道路です。
T字路の角地でもあります。
この物件の良さを活かすには、良いデザインをしなければいけませんでした。
人々の目につく良い物件でしたので、街にとってプラスになるデザインが必須だと思いました。少しでも地域住民がプラスに感じてくれる場所にしたいと思いました。
そこで、LOTUS DENTAL CLINICは、限られた条件下でデザイン要素を最大化しようと心に決めました。
クリニックデザインというものは、この業界が長きにわたって蓄積してきた慣わしや取り決め、施工業者の方程式、既成概念が大きく出ます。
大型医療機械と配管は独特で空間を埋め尽くしますし、受付や診療室、スタッフルーム、器械室などのゾーニングは部屋の目的種ごとに境界が明確になっています。(プライバシー保護と感染管理の観点から)
診療所が具備すべき要件は、必要条件であると同時にデザインにとって足枷となります。
デザイン要素を最大化させるために、歯科内装、クリニック内装のデザインを手がけたことがない会社にお願いしようと思いました。既成の概念を越えたかった。
しかし、これはチャレンジングなことです。
歯科クリニックは、大型機械の規格や配管・配線が独特ですので、リスクを避けるためにお決まりの歯科内装業者に依頼するのが安心です。
施工業者もデザイナーさんも慣れているので、段取りもスムーズで、打ち合わせ回数も少なく、労力も最小限に抑えることができます。毎日深夜まで図面とにらめっこすることもありません。
そのような中、労力やリスクを選んででも唯一性(創造性、デザイン)を求めたわけです。
物件を選定した直後からこの立地が持つ形容し難い可能性を感じていましたが、ANEU小坂井さんが見事に形にしてくださいました。
ANEU小坂井さんはいままで数多くの店舗やレストラン、オフィスを手がけられてこられました。
ポートフォリオ(作品集)を拝見し、直感で小坂井さんにお願いしたいと思いました。
作家さんとのつながりも広く、特注品や一点ものの装飾品、オブジェなども取り入れているのが目に留まりました。
小坂井さんは、打ち合わせの機会を何度も設定してくださり、根気よく対応してくださいました。
メーカーや業者を交えた合同会議を何度も行いました。
小坂井さんは、歯科クリニックの図面を一回も見なかったそうです。
参考にするとデザインがそちらに引っ張られるそうです。
その結果、想像よりはるか斜め上の良きデザインとなりました。
二か月働いてみて
先週、午前中の時間を使ってクリニックを全体的にお掃除しました。
クリニックがオープンして早2ヶ月が経ちました。
日々同じ職場で働いていると、使いやすさや細かい汚れなど、いろんなことに気づきます。
クリニック空間全体の空気感はとてもよく、照明は柔らかく、素材はやさしく、機能的で業務がしやすく、スタッフのストレスがないどころか日々癒されています。
隅々まで洗練されていますが、圧迫感を感じさせず、立地に溶け込んでいるように思えます。
広大な土地の上に自由に設計していいという空間的制限のない条件下では、ある程度自由なクリニックデザインができると思いますが、都内の小さなテナントにおいては、クリニックデザインをする上でオリジナリティを出すというのはものすごく難しいことのように思えます。さらに奇抜であれば良いというわけではなく、医療従事者の労働体験を高め、患者の快適さを守るデザインでなければならなりません。
そのような意味で今回のlotus dental clinicのデザインは、審美性と機能性さらには唯一性を兼ね備えた、都会におけるクリニックデザインの新しいカタチを提示されたのではないかと感じています。とても満足しています。
少し手前味噌になってしまいましたが、いい空間になっていますので是非お越しいただければと思います。
LOTUS 矢野