全国には数多くの内装業者があります。
それぞれの内装業者が、商店や飲食、オフィスに、個人宅などの用途によって専門性を異にしています。
その中でもクリニック内装を専門とする業者というものがあり、
衛生管理から配管、患者とスタッフの動線にいたるまで、業態特有の勘所を押さえて設計してくれます。
歯科クリニックの内装では、給排水とエアーの供給、バキュームなどの配管構造が床下に張りめぐらされるため、20-30cmの底上げが必要となります。
診療室を個室にするかどうかで、空調の設計(天井の高さ設定)も大きく変わるため、天井の高さとのせめぎあいになります。
また、レントゲン室では放射線防護を行ったり、大型医療機器を導入したりと、デリケートに扱うべき部分が多くあります。
また通常は、物件が決まってから開業に至るまでの短い期間に短期集中で作り込んでいくため、ある程度経験の多い業者に頼むのが安全策かと思われます。
歯科クリニックの作りがある程度似ているのは、このような理由からです。
都市部のテナントで開業する場合、広さの関係から、設計の自由度は決して高くありません。
何件も歯科の内装を手掛けてきた歯科内装専門業者は、似通わざるを得ない環境条件の中で、なんとかクリニックのオリジナリティを創ろうと努めてくれるわけです。
わたしはクリニックの内装にはこだわりを持ちたかったので、
早い段階から、内装業者の調査をはじめました。
クリニック内装の分厚い専門書を数冊購入し(非常に高いのです)、
各業者の作例を眺めながら、日々、想像を膨らませました。
各業者で値段も違えば特徴も違います。
デザイナーが別にいる場合もあれば、
そのまま平面図の設計が始まることもあります。
あるいは、CGイメージを一切作らない場合もあります。
そして値段は相応に違います。
私は内装を考える上で大切にしたい価値観がありました。
作例を眺めながら、その価値観とマッチする業者を一つ二つ見つけました。
2社とも業界では有名な会社で、デザインの匠がいる会社です。
歯科業界では著名な先生方がこの二社に施工を依頼していました。
クリニックの見栄えはよく、素材の選択も優しく、
軽やかな癒やしと、落ち着いた重厚感のバランスが絶妙でした。
心中では、どちらかの会社に施工を任せようと考えていましたが、
どうしても100%の確信が持てません。
考え尽くした結果、
もう一度ゼロから考えることにしました。(続く)
LOTUS 矢野